子供の外傷(けが、打撲、やけど)
けが
子どもは好奇心旺盛で危険を顧みず行動するため、よくけがをします。加えて、骨や筋肉など体の機能が未発達なため、大人では問題ないけがも重症化することがあります。したがって、子どもの安全を守るためには、けがの予防が重要になります。
緊急受診が必要な場合
子どもがけがをした際に、病院に行くべきか迷うことがあります。
軽視せずに観察し、以下の症状が見られる場合はすぐに受診が必要です。
- 反応が鈍く、意識がもうろうとしている
- 呼吸に異常がある
- 傷口が大きく、出血が止まらない
- 骨の変形や強い腫れ、痛みがある
特に頭部や顔面、首などのけがは、脳や眼球など重要な臓器に影響を与える可能性があります。そのため無理に動かさず、状況に応じて救急車を呼ぶことが重要です。
受診の判断に迷った場合は、以下の電話番号に問い合わせてみましょう。
- 「こども医療電話相談事業(#8000)」(厚生労働省)
- 「救急安心センター事業(#7119)」(総務省消防庁)
何科を受診すべきか
けがをした場合、受診する科は傷の状態や程度に応じて異なります。小児科では対応できない場合もあるため、各病院に確認しましょう。
- 小児外科・外科:切り傷やすり傷の処置は、小児外科や外科が一般的です。傷が深い場合は、縫合などの外科的処置が行われます。
- 整形外科:ねんざや骨折、子どもに多い肘内障(ちゅうないしょう)などに対応します。骨折が疑われる場合はレントゲン検査を行うこともあります。
- 形成外科:やけど、顔面骨折、ケロイド、肥厚性瘢痕(みみずばれ)などに対応します。体の異常や変形、欠損を治療する診療科と考えてください。
さらにけがをした部位に応じて、頭部打撲の場合は脳神経外科、眼や耳のけがの場合は眼科や耳鼻咽喉科に相談しましょう。
やけどは皮膚科でも治療を受けることができますが、広範囲や重症のやけどの場合は、設備の整った病院への受診が必要です。
子どものけがの種類
子どものけがにはさまざまな種類のものがあります。それぞれの対応方法について以下で説明します。
切り傷
はさみやカッターなどでけがをしたら、傷口を水道水で洗い流します。血が止まらない場合は、清潔なガーゼやタオルで圧迫します。深い傷の場合は神経や血管、筋肉を傷つけることがあるので、慎重に対応します。
すり傷
転ぶなどしてすりむいた擦過創の場合は、傷口を水道水で十分に流し、土や砂を取り除きます。消毒は傷治癒に悪影響を与えるため、現在は傷口の消毒は行わないことが一般的です。傷口は乾燥させず、浸潤環境を保つ治療が推奨されます。ワセリンを塗るか、絆創膏を貼って数日ごとに交換しましょう。
刺し傷
えんぴつの芯や木片などが刺さった場合、傷が浅い場合はピンセットで刺さった物を抜いて洗い流し、清潔なガーゼで圧迫して止血します。深い刺し傷や、汚れから感染するおそれがある場合は、病院での処置が必要です。
咬み傷
動物や人に咬まれることもあります。特に猫の歯に付いた雑菌は感染のリスクが高いため、早急に大量の水道水で洗い流し、止血します。セルフケアだけでは症状が悪化するおそれがあるため、必ず病院を受診しましょう。
破傷風予防のため、ワクチン接種が行われることもあります。受診の際は、予防接種手帳を持参しましょう。
ねんざ・脱臼・突き指
ねんざは関節部分が損傷するけがで、脱臼は肩や肘などの関節が外れるけがです。突き指は指先に強く物が当たることで起こるけがで、この場合決して指を引っ張ってはいけません。症状が悪化して神経損傷につながる恐れがあります。
これらのけがをした時は、冷やして安静にすることが大切です。腫れや内出血に対しては、テーピングや包帯などで患部を軽く圧迫し、心臓より高い位置に保つ応急措置をします。受傷部位の見た目が変形している、色が悪い場合は骨折の可能性もあるため、速やかに受診しましょう。
肘内障(ちゅうないしょう)
転倒や腕を強く引っ張られることによって、肘のじん帯から骨が外れかかった状態を指し、5歳以下の子どもに多く見られます。子どもはひどく痛がり、腕を動かすことができません。医師が子どもの腕を回転させて元に戻す整復(せいふく)が行われ、元に戻れば痛みは消失します。
切断
大きなけがをして指が切断された場合、血行を再開させるために早急な手術が必要です。
切断した指は湿ったガーゼに包み、ビニール袋に入れて外側から氷水などで冷やします(直接氷水に浸けない)。クーラーボックスなどに入れて病院へ持参しましょう。受傷部位は清潔なガーゼなどで保護、圧迫します。腫れや痛みの軽減のため、患部を心臓より高い位置にあげておきましょう。
打撲
打撲は、いわゆる打ち身と呼ばれ、転倒や転落など何らかの衝撃が加わることで、体が損傷を受けるものです。
子どもは頭が大きくて重く、バランスを崩しやすいため転倒しやすいという特徴があります。寝返りがうてるようになった赤ちゃんでは、ベッドやベビーカーからの転落事故が起こります。子どもが動くようになってからは、階段や遊具、自転車などからの転落もけがにつながり、ベランダや窓からの転落事故は後を絶ちません。
症状
打撲によって皮膚が変色する皮下出血は「青あざ」ともいわれ、細胞のすき間にたまった血が皮膚を通して見えるものです。青紫色だったものは、時間が経つにつれて黄色から茶色へと変化し、徐々に消えていきます。重力に従って色味の部位が移動することもあります。
対処法
ぶつけたときは冷たい濡れタオルや、タオルでくるんだ保冷剤を使用して患部を冷やします。皮膚表面に作用する冷却シートはおすすめできません。深部への冷却効果はない上に、傷がある場合はシートを使うと悪影響になります。
注意点
胸やおなか、頭部を打撲した場合は命に関わるおそれがあり、注意が必要です。ぶつけたときは症状がなくても、時間が経過してから症状が出現することもあります。
以下ような様子が見られる場合は、直ちに救急車を呼んでください。
- 頭やおなかなど、受傷部位をひどく痛がる
- 顔色が悪い
- 意識がおかしい
- けいれん
- 嘔吐 など
受傷部位に応じた注意点
頭部打撲
生後数ヶ月でソファーやベッドからの転落、抱っこをしていて落としてしまったというケースもよくあります。心配な場合は受診をおすすめします。
顔色が悪い、嘔吐が頻回である場合は救急車を呼んでください。打った場所が数日後に腫れてきた場合は、骨折の可能性もあるため、病院を受診しましょう。
眼球打撲
目の近くにボールをぶつけたなどで、目の周りにパンダのような跡がある場合には、顔の骨の骨折がないか、目の動きは問題ないかを確認してください。目の周囲をぶつけた場合は、受診をおすすめします。
顔の傷
顔はぶつけたり、切ったりしやすい箇所ですが、ぱっくり切れている傷は当院での処置が難しいため、皮膚科や外科のある病院を受診してください。
→当院の周辺ですと、日赤医療センターや都立広尾病院が対応しています。
やけど
子どもは好奇心が強く、学習能力が十分に発達していないため、熱いものが危険であるという認識を持つことが難しいです。また、熱いものに触れてもすぐに手を離せないことが多く、ちょっとした不注意でやけどを負ってしまうことがあります。
子どもの皮膚は、大人に比べて薄く、熱に対する耐性が低いため、同じ温度の熱でも大人より深いやけどを負いやすいという特徴があります。
また、消毒液や漂白剤などの化学物質による化学熱傷も存在します。
原因
やけどの原因には、以下のようなものがあげられます。
- お茶やみそ汁などの高温の液体が皮膚にかかること
- アイロンやストーブなどの熱い物に接触すること
電気ケトルや炊飯器などの湯気は、熱湯より高温になるためさらに危険です。
対処法
やけどを負った場合に取るべき対応は以下の通りです。
① すぐに流水で20分間冷やす。
冷やす際には、以下の点に注意しましょう。
- 冷やしすぎて子どもの体温が下がらないようにする。
- 氷水ではなく水道水を用いる(低温で患部の組織を傷つけ、血流が悪化してしまうため)。
- 冷やす時は服を脱がせるのではなく、服の上から行う(無理に服を脱がせると皮膚がはがれ、治癒が遅れることがあるため)。
ただし、消毒液や漂白剤などによる化学熱傷の場合は服を早急に脱がせ、薬品に触れないようにすることが大切です。
② 顔や頭、指の関節など、重要な器官が関わる場合には、傷の範囲が小さくても病院を受診しましょう。
顔の皮膚は薄く、熱によるダメージを受けやすいです。やけどの跡が残ると、美容面でも問題が生じる可能性があります。また、指の関節をやけどすると、指の動きに影響を与えることもあるため、早期の治療が重要です。
低温熱傷
低温熱傷とは、40~55度程度のものに長時間接触することによって、皮膚にダメージが与えられるものです。
特に冬場に湯たんぽや電気毛布などを使用している際に発生しやすいやけどです。
低温熱傷は、長時間接触することで皮膚が損傷し、見た目よりもダメージが深いことが多いため、治療に時間がかかることがあります。
子どものやけどには様々な原因とリスクがあり、予防と迅速な対応が重要です。特に顔や関節など重要な部位にやけどを負った場合や、化学熱傷の場合には、早急に専門的な治療が必要となります。
まとめ
子どものけが、やけどは軽視せず、適切な処置とタイミングでの受診が大切です。特に、けがの内容によっては専門の診療科を受診し、必要に応じて専門的な治療を受けることが予後を良くするために重要です。
また危険なものは子どもの手が届かない所に置く、ドアや窓で指を挟まないようカバーをつけるなど、日頃から子どものけがを防ぐための環境を整えることも大切です。
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恵比寿こどもクリニックでは、小児科専門医・アレルギー専門医の保科しほ院長を中心に、『共育て』をモットーに診療を行っています。日々子育てに悩むご両親と同じ目線で、お子さんの病気や健康の問題に向き合うことはもちろん、ご両親の支援にも積極的に取り組んでいます。
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