股関節脱臼
股関節脱臼とは、太ももの骨(大腿骨)の先端にある「大腿骨頭」が、骨盤側のくぼみ(臼蓋=きゅうがい)から外れてしまう、または正しくはまっていない状態を指します。
特に乳児期に見られる股関節脱臼は「発育性股関節形成不全」と呼ばれ、生まれつき股関節の構造が未発達であったり、後天的な影響で脱臼が起きる場合があります。早期発見と治療によって、正常な股関節の発育が促され、歩行や運動に支障なく成長することができます。
原因
股関節脱臼の原因は、先天的・遺伝的な要素と後天的な生活習慣が複合的に影響していると考えられます。
先天的要因
- 子宮内での姿勢(骨盤位=逆子の場合、股関節に負担がかかる)
- 関節の靭帯が生まれつきやわらかい
- 遺伝的要因・家族歴(家族に脱臼経験者がいるとリスクが高まる)
- 女児の方が関節がやわらかいため、発症しやすい(男児の約4〜9倍)
後天的要因
- おむつの当て方や抱っこの仕方などで足がまっすぐに引っ張られる姿勢が続くと、股関節が外れやすくなります。
- 足を広げずに固定してしまうような抱き方・寝かせ方もリスクとなります。
症状
赤ちゃんの股関節脱臼の症状は、外傷による脱臼と異なり、脚の痛みや動かしにくさを訴えることはあまりありません。定期健診などで発見されるケースが多いです。主な兆候には以下のようなものがあります。
- 立て膝(特に向き癖の反対側)
- 脚の長さが左右で異なる
- 太もものシワ(皮膚のしわ)の位置が左右非対称
- おむつ交換時などに脚が左右に開きにくい
- 歩き始めた後に足を引きずるような歩き方(跛行:はこう)
- 両足脱臼の場合、お尻を左右に振るような歩き方になることもある
なお、乳児健診(生後3~4か月)の股関節検査では、「開排制限」や「クリック音」などがチェックされます。
確定診断には、4ヶ月頃までは超音波検査(軟骨をみる)、6ヶ月を過ぎた頃からはレントゲン検査(骨をみる)が用いられます。
治療
股関節脱臼の治療は、年齢と脱臼の程度によって異なりますが、早期の治療によりほとんどのケースで正常な関節の形成が可能です。
乳児期(〜6ヶ月頃)
- おむつや抱き方の指導
- リーメンビューゲル装具と呼ばれる特別なベルトを装着し、股関節を自然な開脚状態に保つことで関節を安定させます。装着期間は通常3ヶ月程度で、外来治療で8割が整復されます。
6か月以降
- 装具で治らない場合や発見が遅れた場合は、牽引療法(OHT法など)が行われます。3~6週間入院して牽引治療を行い、6~8ヶ月間ギプスで固定します。
- それでも整復が困難な場合は、全身麻酔下での手術(観血的整復術など)が必要になります。
治療後
- 治療後は経過観察として、定期的にレントゲン検査や超音波検査を行い、股関節の発育状態を確認します。
注意点
- 早期発見が非常に重要です。生後半年までに発見できれば、入院が必要になる治療のほとんどが避けられます。乳児健診や育児中に異変を感じたら、速やかに整形外科または小児整形外科を受診しましょう。
- 赤ちゃんはO脚で、カエルのようにお股をM字に開いているのが正常です。足を無理にまっすぐにしない抱っこやおむつ替えの仕方を心がけましょう。長時間の横抱きは避け、抱っこひもなどを用いた立て抱っこ(コアラ抱っこ)が推奨されます。
- 装具を正しく使うことが大切です。外れたり、ずれたりしないように装着指導をしっかり受け、指示された装着期間を守ることが重要です。
股関節脱臼は、特に乳児に多く見られる関節の異常ですが、早期に適切な対応をすれば、正常な発育が可能です。普段の育児の中で赤ちゃんの足の動きやシワの左右差などに気を配り、定期健診でのチェックを活用することで、早期発見・早期治療につながります。治療が必要になった場合も、子どもの成長に応じた段階的なアプローチがあるため、医療機関とよく相談しながら進めていくことが大切です。
股関節の開きが気になる場合は、お早めにご相談ください。
【お気軽にご相談ください】
恵比寿こどもクリニックでは、小児科専門医・アレルギー専門医の保科しほ院長を中心に、『共育て』をモットーに診療を行っています。日々子育てに悩むご両親と同じ目線で、お子さんの病気や健康の問題に向き合うことはもちろん、ご両親の支援にも積極的に取り組んでいます。
より良い医療を追求するために、東京と神奈川を中心にコミュニティ・クリニックを展開している医療法人社団こころみから、運営サポートを受けています。
地域密着型のかかりつけ小児科クリニックとして、お子さんの成長を共に見守っていくことを目指しております。
お子さんの病気や健康のお悩みはもちろん、恵比寿の子育ての安心に貢献したいと思っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。
Tel: 03-3442-2525
Web予約はこちらから