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その他の感染症

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は、ムンプスウイルスが原因の感染症で、唾液や呼吸器分泌物を介して人から人へと伝染します。
潜伏期間は2~3週間で、この間にウイルスが血流により全身に運ばれ、唾液腺・中枢神経・性腺・内耳・膵臓など様々な臓器で炎症を起こします。耳下腺が最も腫れやすいので「流行性耳下腺炎」と呼ばれますが、実際には全身の臓器で炎症を起こす病気と言えます。
主に3〜6歳の幼児に発症し、成人にも感染することがあります。

症状

おたふくかぜの症状は約2週間の潜伏期間を経て現れます。
主な症状には以下のようなものがあります。

  • 耳下腺の腫れ(両側もしくは片側)
  • 発熱
  • 嚥下痛、疼痛

耳の横の耳下腺や、あごの下の顎下腺が痛み始め、翌日に腫れや発熱を伴います。時期はずれますが、両側の耳下腺が腫れることが多いです。顔が変形するほど腫れることも多くあります。

ワクチンを接種している場合は、症状が軽度で済むことが多いです。接種していない場合は腫れや痛みが強く、熱も高くなることがあります。通常であれば、唾液中や尿中へのウイルスの排出が発症後しばらく続き、5日程度で感染力は弱まります。

しかし無症状の「不顕性感染」という場合もあり、感染していることに気づかないうちに周囲に感染を広げることがあります。子どもの感染の場合は約1/3が、成人の場合は大部分が不顕性感染になると言われているため、注意が必要です。

合併症

おたふくかぜは多くの場合軽症で済みますが、場合によっては重症化して以下のような合併症を引き起こすことがあるため、注意が必要です。

  • 無菌性髄膜炎:ムンプスウイルスが脳や脊髄の膜に感染して発生するもので、1~10%の割合で起こる。発熱、頭痛、首の硬直、嘔吐などの症状が現れる
  • 膵炎:非常に強い腹痛や吐き気を伴い、血糖値の上昇がみられることもある。起こる頻度はまれだが、重症化すると死に至ることもある。
  • 睾丸炎:小児のおたふくかぜではほとんどみられないが、思春期以降の男性が罹患した場合、20~30%が併発する。将来の不妊症リスクを高める恐れがある。
  • 卵巣炎:思春期以降の女性が罹患した場合発生することがあるが、睾丸炎に比較すると発生率は少ない。
  • 難聴:非常に稀だが、発症した場合は重度の難聴となる可能性が高い。片側

診断と治療

おたふくかぜの診断は、主に症状に基づいて行われ、血液検査や尿検査で確定診断となります。特効薬はなく、治療は症状を軽減するための対症療法となります。
具体的には以下のような治療となります。

  • 鎮痛剤や解熱剤を用いて痛みや発熱を抑える
  • 安静にして体力の回復を図る
  • 十分な水分補給を行う

症状は1~2週間で自然治癒しますが、合併症の併発がないか様子を観察することが重要です。特に睾丸炎や髄膜炎が発生した場合には、入院治療が必要になることがあります。合併症が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診し、適切な治療を受けてください。

おたふくかぜは空気感染なので、腫れがある間は外出禁止となります。腫れが引いてから再度受診していただき、外出が可能かご相談ください。

感染予防

おたふくかぜの予防にはワクチンが有効です。任意接種ですが、通常生後12~15ヶ月で初回接種を行い、4~6歳で追加接種を受けることが推奨されています。

ワクチンにより発症のリスクを減らすことができます。また発症しても、腫れが片側だけ、発熱を伴わないなど症状を軽減することができます。ワクチン接種は自己負担ですが、自治体によっては補助がある場合もあります。

リンゴ病(伝染性紅斑)


リンゴ病は、主に小児に多く見られるウイルス性の感染症です。頬が赤くなる特徴的な発疹が見られることから「リンゴ病」と呼ばれています。医学的には「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」と呼ばれ、5〜15歳の子どもに多く発症しますが、大人が感染することもあります。通常は軽症で済みますが、妊婦さんや基礎疾患のある方は注意が必要です。

原因

リンゴ病の原因は「ヒトパルボウイルスB19」というウイルスです。
感染経路は、以下の2通りです。

  • 飛沫感染:感染した人の咳のしぶき(飛沫)を吸い込むことによる感染
  • 接触感染:感染した人に直接触れたり(抱っこなど)、ドアノブや手すりなど汚染されたものを介して起こる感染

発疹が現れる前の、かぜのような症状がある時期(潜伏期間後の1週間程度)に最も感染力が強く、発疹が出る頃には感染力はほとんどなくなります。

症状

感染から約10~20日の潜伏期間を経て、以下のような症状が現れます。

  • 初期症状:微熱、倦怠感、頭痛、軽い咳など、かぜに似た症状。
  • 典型的な発疹:両頬に蝶の羽のような赤い発疹(紅斑)が現れます。その後、腕や太ももなどにもレース状や網目状の発疹が広がることがあります。これらの発疹は、1週間程度で消失します。
  • かゆみ:発疹にかゆみを伴うこともあります。

成人が感染した場合、アザのような紫斑や、関節痛を伴う関節炎などの症状が現れることがあります。子どもより重症化しやすい傾向があり、注意が必要です。

治療

リンゴ病に特効薬や特別な治療法はありません。ウイルス感染症のため、症状を和らげる対症療法が中心となります。
安静にして、水分補給をすることが重要です。熱や痛みがある場合は解熱鎮痛剤を使用しましょう。ほとんどの場合は自然に回復します。

自宅での対処法

  • 安静に過ごす:睡眠をしっかりとり、体力の回復を図ります。
  • 水分補給:発熱時には脱水症状にならないよう、十分な水分補給を心がけます。
    水分補給の方法については、嘔吐・下痢時の水分補給のページをご参照ください。
  • 皮膚のケア:かゆみが強い場合は冷やしたり、医師の指導のもとでかゆみ止めを使用します。
  • 保湿:乾燥によってかゆみが悪化することがあるため、保湿剤を使用するのもよいでしょう。

注意点

妊婦への感染

妊婦さんがリンゴ病に感染すると、胎児に重い影響を与えるリスクがあります。流産や胎児水腫を引き起こすこともあります。妊婦さんが感染した場合、胎児の異常が30.6%、胎児の死亡が10.2%起こると言われています。
流行時期には、人混みや小児施設への訪問を避けるなどの配慮が必要です。かぜ症状がある人との接触をできる限り避け、手洗いやマスク着用などの基本的な感染対策を心がけましょう。

基礎疾患のある人

ステロイドや免疫抑制剤を内服している方、白血病や溶血性疾患の方などがリンゴ病にかかると、重症化したり重篤な合併症を引き起こすことがあります。

感染拡大の防止

発疹が出る前がもっとも感染力が強いため、症状が出た時点ではすでに他人にうつしている可能性があります。ただし、発疹が出た後は登校や登園を控える必要はないとされています。
かぜ症状のある人は、こまめな手洗いや咳エチケットなどの感染対策を徹底してください。

リンゴ病は多くの場合、軽症で済み自然に回復する病気ですが、妊婦さんや特定の持病がある方にとってはリスクのある感染症です。流行時期には手洗いや咳エチケットを徹底し、予防に努めましょう。

クループ症候群

クループ症候群は、上気道の炎症や腫脹によって気道が狭くなることで発症する疾患の総称です。主な原因はウイルス性クループと急性喉頭蓋炎で、それぞれ特徴的な症状と治療方法があります。

ウイルス性クループ

ウイルス性クループは、生後6か月から3歳の乳幼児に多く見られ、晩秋から冬にかけて流行します。主にパラインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、コロナウイルスなどが原因です。感染は飛沫感染や接触感染で広がります。
以下のような症状が特徴的です。

  • 声がかれる(嗄声)
  • 犬吠様の咳
  • 呼吸時に「ゼイゼイ」や「ヒューヒュー」といった音が鳴る吸気性喘鳴 など

通常、1週間以内に自然に回復しますが、夜間に症状が悪化することが多いため、特に注意が必要です。

以下のような治療が行われます。

  • デキサメサゾン(デカドロン)による炎症抑制
  • アドレナリン吸入による呼吸困難の緩和

重症の場合は入院し、酸素投与や点滴が必要となることもあります。

急性喉頭蓋炎

急性喉頭蓋炎は、喉頭蓋とその周囲に細菌が感染することで発症します。主な原因菌はインフルエンザ菌b型(Hib)です。
ワクチンの普及により近年は珍しい病気となっていますが、発症すると急速に容態が悪化し、気道が閉塞して死に至ることもあります。
以下のような症状が現れます。

  • 急激な喉の痛みや発熱
  • 食べ物が飲み込めない(飲み込むと痛い)
  • よだれの増加
  • 呼吸困難
  • 息を吸う時に鳴る「ゼイゼイ」「ヒューヒュー」という音
  • 陥没呼吸(のどや鎖骨上がへこむ現象)

診断には、内視鏡や頸部X線で喉頭蓋の腫れを確認する方法が用いられます。
治療は入院が必要で、気道確保のためのどに管を挿入したり、抗菌薬を投与します。
予防にはHibワクチンの定期接種が重要です。

自宅療養の注意点

クループ症候群では夜間に症状が悪化することが多いため、特に注意が必要です。
以下のような症状が認められた場合、早急に医療機関を受診させてください。

  • 意識がはっきりしない
  • 呼吸音の減弱
  • 陥没呼吸(息を吸う際にのどの下、鎖骨の上がペコペコへこむ)
  • チアノーゼ(酸素不足により皮膚が青く変色する)

夜中に数時間で治ることも多いですが、症状が数日持続することもあります。そのため、夜中から症状が出て、翌朝軽快していたとしても、翌日受診することをおすすめします。 

クループ症候群はウイルス性と細菌性の2種類があり、それぞれの症状と治療法が異なります。ウイルス性クループは一般的に軽症であり、数日で回復しますが、急性喉頭蓋炎は迅速な対応が求められる重症の病気です。定期的な予防接種が特に重要です。

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(こころみ医学『おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の症状・診断・治療』
https://cocoromi-cl.jp/knowledge/pediatrics/rare-pediatrics/mumps-2/
(厚生労働省『伝染性紅斑』のページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/fifth_disease.html )
(こころみ医学『クループ症候群の特徴や症状』
https://cocoromi-cl.jp/knowledge/pediatrics/pediatrics-symptom/croup-syndrome/

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