嘔吐
嘔吐は、体が異常を察知して胃の中身を排出しようとする防御反応です。嘔吐の原因は多岐にわたりますが、「様子を見てよい嘔吐」と「緊急性の高い嘔吐」があります。
この記事では、嘔吐を生じさせる疾患の中でも頻度が高いものの中から、「様子を見ていても良い嘔吐」と「緊急性の高い嘔吐」に分けて解説していきます。
嘔吐の原因
疾患の解説の前に、嘔吐を引き起こす原因について簡単に説明します。
嘔吐の原因は次の4つに大別されます。
- 消化器系の問題:胃腸の炎症や閉塞によるもの。嘔吐と腹痛が多い。
- 耳に関係する問題:めまいや乗り物酔いなど、耳の中にある前庭の異常により起こる。通常は安静にして身体を休ませれば回復する。
- 脳に関係する問題:髄膜炎や脳腫瘍、頭部外傷などで頭蓋内圧が上がると嘔吐が起こる。意識障害やけいれんを伴う場合は早急に医療機関を受診しましょう。
- 精神的要因:強いストレスや恐怖によるもので、感情や精神的な刺激が嘔吐を引き起こすことがある。身体的な異常が見られない場合に疑われる。
様子を見てもよい疾患
ウイルス性胃腸炎
ノロウイルスやロタウイルスが原因となることが一般的で、冬に流行します。嘔吐・下痢・発熱などの症状が見られます。ウイルスが体外に排出されてしまえば症状は回復するため、基本的には経過観察でOK。
ただし嘔吐と下痢によって脱水になりやすいため、水分補給が重要です。経口での水分摂取が難しい場合は点滴を行います。
嘔吐・下痢時の水分補給についてもご参照ください。
感染を広げないための予防対策が重要です。以下の対処を心がけましょう。
- 石鹸を使った手洗い
- 室内(ドアノブや電気のスイッチなど)の消毒
- 嘔吐物やおむつを処理する際の使い捨て手袋とマスクの着用
ノロウイルスの場合はアルコールの消毒効果はないため、次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイター)を薄めたものを使用しましょう。
食中毒
原因は生肉や魚介類、生卵、乳製品など。食材が傷みやすい夏に多く発生します。食中毒による嘔吐や下痢も、細菌やウイルスが排出されれば自然回復しますが、脱水には注意しましょう。水分摂取を促しながら、安静にして様子を見ます。
乳糖不耐症
乳糖不耐症とは、乳製品に含まれる糖(乳糖)を消化できないために、乳製品接種後に嘔吐や下痢が起きる症状を指します。乳糖を分解する「ラクターゼ」という酵素が不足しているため、腸内でガスや酸が発生し、腹痛や下痢、嘔吐などの症状が現れます。
ラクターゼの不足は、基本的には遺伝的要因(先天的要因)によるものと考えられています。自然に治癒することはほとんどないため、乳製品摂取を控えることが基本的な対応になります。また乳糖分解酵素のサプリメントを使用するなどして、栄養バランスに注意しながら対応しましょう。
胃食道逆流症(GERD)
小児の場合、食道括約筋が十分に発達していないため、胃の内容物が食道に逆流し やすくなります。そのため、多くの赤ちゃんが生後数ヶ月間、授乳後ミルクを吐き戻 すことがあります。食道括約筋は成長と共に発達するため、多くの場合自然に改善さ れます。
緊急性が高い主な疾患
腸重積
腸が重なり合って詰まる状態で、生後6か月〜2歳の乳幼児に多くみられます。突然の激しい腹痛・嘔吐・イチゴゼリー状の血便などの症状が特徴的です。腸の壊死(腐敗)を引き起こすリスクがあるため、緊急受診が必要です。
急性虫垂炎(盲腸)
10~20歳代に好発し、小児の急性腹症の原因として最も多い疾患となります。右下腹部の激しい痛みや嘔吐、発熱などの症状が典型的な症状です。最初おへその周りにあった痛みが右下腹部に移動する場合は、急性虫垂炎の可能性が高いです。虫垂破裂による腹膜炎のリスクがあるため、緊急受診が必要です。
腸閉塞(イレウス)
腸管の詰まりやねじれにより食べ物やガスが通れなくなる状態です。原因は腸重積や先天性腸閉鎖症などで、腹痛や嘔吐、膨満感、便秘などの症状が現れます。手術が必要なこともあります。
髄膜炎
脳や脊髄を包む膜(髄膜)が細菌やウイルスなどの感染により炎症を起こす病気です。初期症状としては、激しい頭痛や発熱、首の硬直、意識障害、嘔吐、光に対する過敏症などがあげられます。放置すると命に関わるため、緊急受診が必要です。
上記の疾患については、腹痛のページもご参照ください。
まとめ:対応のポイント
嘔吐は単なる胃腸の不調だけでなく、命に関わる病気のサインである場合もあります。嘔吐だけでなく、発熱・意識の変化・腹痛・けいれん・血便などの症状を伴う場合は、迷わず医療機関を受診しましょう。特に乳幼児は脱水のリスクも高いため、水分補給ができているかの観察も重要です。
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